工事の一部を下請けに請け負わせる時は、施工体制台帳の「下請負人に関する事項」の作成が必要になります。ここでは、下請負人に関する事項の作成方法について、記入例を用いて詳しく説明します。
下請負人に関する事項の作成
国土交通省 近畿地方整備局HPの「建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者」を参考にして説明します。
※平成31年4月1日以降に契約した工事は「一号特定技能外国人の従事の状況(有無)」記入欄が追加になりました。
下請負人に関する事項の記入例です。
記入欄にに番号を振りました。いくつかに分けて説明します。
参考資料
出典:国交省 近畿地方整備局
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建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者
https://www.kkr.mlit.go.jp/kensei/index.html
下請負人に関する事項の記載内容に番号を振りました。いくつかに分けて説明していきます。
下請けの会社名など
①:下請けの会社名、代表者名、住所、電話番号を記入します。
工事名称及び工事内容
②:工事名称と下請け会社の工事内容を記入します。
工期
③:下請け会社の工期を記入します。
契約日
④:契約日を記入します。注文書・注文請書の場合は、注文請書の日付になります。
建設業の許可
⑤:下請けの場合は、建設工事に必要な許可業種(略称可)を全て記載します。許可年月日がいくつかに別れている場合や多すぎて入りきらない時は、下の行を使うなど分けて記入すると良いでしょう。
建設業の許可期間は5年以内になります。許可更新申請中などで日付がわからない時は、許可年月日の下などに「○月○日に更新申請中」と記入しておくと良いと思います。
建設業の許可が無い会社の場合や施工体制台帳に記載すべき下請けについては、一番下にまとめて記載しています。
健康保険
⑥:健康保険の適用になる営業所が届け出を行っている場合は「加入」、行っていない場合(摘要になる営業所が複数あり一部について行っていない場合を含む)は「未加入」、保険の摘要が除外されている場合(従業員規模、建設国保など)は「摘要除外」を囲みます。
厚生年金保険
⑦: 厚生年金保険の適用になる営業所が届け出を行っている場合は「加入」、行っていない場合(摘要になる営業所が複数あり一部について行っていない場合を含む)は「未加入」、保険の摘要が除外されている場合(従業員規模など)は「摘要除外」を囲みます。
雇用保険
⑧: 雇用保険の適用になる営業所が届け出を行っている場合は「加入」、行っていない場合(摘要になる営業所が複数あり一部について行っていない場合を含む)は「未加入」、保険の摘要が除外されている場合は「摘要除外」を囲みます。
営業所の名称
⑨:事業所整理記号等は、それぞれ元請契約に係わる営業所の名称および下請契約に係わる営業所名を記入します。
健康保険、厚生年金保険、雇用保険の番号
⑩ ⑪ ⑫:各保険番号を記入します。
健康保険、厚生年金、雇用保険の施工体制台帳への番号記載方法について、どの書類のどこの番号を記入したら良いかわかりやすくまとめたものを見つけました。
参考資料
出典:奈良県土木部建設業指導室
http://www.pref.nara.jp/secure/49145/tuika-syakaihoken-number.pdf
現場代理人名
⑬:現場代理人名を記入します。契約書、約款に現場代理人についての記載が無ければ不要です。
権限及び意見申出方法
⑭:契約書記載のとおり
権限及び意見申出方法の記載については
細かく記載すると
工事請負契約書第○条に記載のとおり
意見申出方法:書面による
下請負基本契約書第○条に 記載のとおり
意見申出方法:書面による
のようになりますが、約款を細かく確認する必要があり、「下請負者に関する事項」でも同じ内容の項目があります。これが数社も重なると施工体制台帳の作成にとても手間がかかってしまいます。国交省から出されている記載例「建設業法に基づく適正な施工体制」の台帳の記入例に基づいて「契約書記載の通り」と記載すれば良いと思います。
希にですが、約款に権限や意見の申出方法ついて記載されていない場合があります。契約前は、見積書にばかり目が行きがちです。約款も重要なのできちんと確認しましょう。
参考資料
国交省 関東地方整備局 建設工事の適正な施工を確保するための建設業法
http://www.ktr.mlit.go.jp/kensan/index00000006.html
主任技術者名
⑮:主任技術者名を記入します。
専任・非専任について
請負金額の額が3500万円(建築一式工事である場合は7000万円)以上の場合は専任になります。
参考資料
- 建設業法施行令 第二十七条
(右側の+ボタンを押すと一覧が表示されます) - (専任の主任技術者又は監理技術者を必要とする建設工事)
第二十七条
法第二十六条第三項の政令で定める重要な建設工事は、次の各号のいずれかに該当する建設工事で工事一件の請負代金の額が三千五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、七千万円)以上のものとする。
一 国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事
二 第十五条第一号及び第三号に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
三 次に掲げる施設又は工作物に関する建設工事
イ 石油パイプライン事業法(昭和四十七年法律第百五号)第五条第二項第二号に規定する事業用施設
ロ 電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第五号に規定する電気通信事業者(同法第九条第一号に規定する電気通信回線設備を設置するものに限る。)が同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する施設
ハ 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十三号に規定する基幹放送事業者又は同条第二十四号に規定する基幹放送局提供事業者が同条第一号に規定する放送の用に供する施設(鉄骨造又は鉄筋コンクリート造の塔その他これに類する施設に限る。)
ニ 学校
ホ 図書館、美術館、博物館又は展示場
ヘ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供する施設
ト 病院又は診療所
チ 火葬場、と畜場又は廃棄物処理施設
リ 熱供給事業法(昭和四十七年法律第八十八号)第二条第四項に規定する熱供給施設
ヌ 集会場又は公会堂
ル 市場又は百貨店
ヲ 事務所
ワ ホテル又は旅館
カ 共同住宅、寄宿舎又は下宿
ヨ 公衆浴場
タ 興行場又はダンスホール
レ 神社、寺院又は教会
ソ 工場、ドック又は倉庫
ツ 展望塔
出典:e-Govウェブサイト
資格内容
⑯: 「一級土木施工監理技士」など具体的に資格名を記入します。
安全衛生責任者名
⑰:下請けが配置する安全衛生責任者名を記入します。
安全衛生責任者を配置するに当たり、法的に資格要件は定められていませんが 実質的に現場に常駐となります。
労働安全衛生規則 第十九条
(安全衛生責任者の職務)
第十九条
法第十六条第一項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 統括安全衛生責任者との連絡
二 統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の関係者への連絡
三 前号の統括安全衛生責任者からの連絡に係る事項のうち当該請負人に係るものの実施についての管理
四 当該請負人がその労働者の作業の実施に関し計画を作成する場合における当該計画と特定元方事業者が作成する法第三十条第一項第五号の計画との整合性の確保を図るための統括安全衛生責任者との調整
五 当該請負人の労働者の行う作業及び当該労働者以外の者の行う作業によつて生ずる法第十五条第一項の労働災害に係る危険の有無の確認
六 当該請負人がその仕事の一部を他の請負人に請け負わせている場合における当該他の請負人の安全衛生責任者との作業間の連絡及び調整
出典:e-Govウェブサイト
直接常駐と記載されていませんが、これらの職務を実施するには常駐になります。
安全衛生推進者名
⑱:下請けが配置する安全衛生推進者名を記入します。
都道府県労働局長の登録を受けたものが行う講習を受講した者や厚生労働大臣が定める者(労働安全コンサルタントなど)を配置する必要があります。
参考資料
- 労働安全衛生規則 第十二条の三
(右側の+ボタンを押すと一覧が表示されます) - (安全衛生推進者等の選任)
第十二条の三
法第十二条の二の規定による安全衛生推進者又は衛生推進者(以下「安全衛生推進者等」という。)の選任は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他法第十条第一項各号の業務(衛生推進者にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当するため必要な能力を有すると認められる者のうちから、次に定めるところにより行わなければならない。
一 安全衛生推進者等を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。
二 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者のうちから選任するときは、この限りでない。
出典:e-Govウェブサイト
雇用管理責任者名
⑲:配置する雇用管理責任者名を記入します。
雇用管理責任者は
- 募集、雇入れ及び配置に関すること
- 技能の向上に関すること
- 建職業生活上の環境の整備に関すること
- 雇用管理に関する事項で厚生労働省令で定めるもの
建設労働者に対して以上の管理を行います。
参考資料
- 建設労働者の雇用の改善等に関する法律 第五条
(右側の+ボタンを押すと一覧が表示されます) - 第五条
事業主は、建設事業(建設労働者を雇用して行うものに限る。第八条において同じ。)を行う事業所ごとに、次に掲げる事項のうち当該事業所において処理すべき事項を管理させるため、雇用管理責任者を選任しなければならない。
一 建設労働者の募集、雇入れ及び配置に関すること。
二 建設労働者の技能の向上に関すること。
三 建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、建設労働者に係る雇用管理に関する事項で厚生労働省令で定めるもの
1号特定技能外国人の従事の状況
⑳:1号特定技能外国人が現場に従事する場合は「有」、従事しない場合は「無」を○で囲みます。
外国人建設就労者の従事の状況
㉑:外国人建設就労者が現場に従事する場合は「有」、従事しない場合は「無」を○で囲みます。
外国人技能実習生の従事の状況
㉒:外国人技能実習生が現場に従事する場合は「有」、従事しない場合は「無」を○で囲みます。
建設業の許可が無い会社の場合
軽微な建設工事、測量、地質調査、警備など建設業の許可の無い会社の記載例です。
建設業の許可①、意見の申出方法③、主任技術者③は斜線になります。現場代理人名を記入する箇所は現場責任者②になります。他の記入箇所は通常の建設業の許可がある会社と同じです。
施工体制台帳に記載が必要・不必要な会社について
建設業法で
(請負契約とみなす場合)
第二十四条 委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律の規定を適用する。
となっています。元請け契約が建設工事の場合、仮設工事、土質試験、測量、警備、ポンプ車など目的物以外のものや建設工事以外のものも施工体制台帳に記載が必要になります。
ダンプの一人親方(掘削、積み込みを含まない)や資材の運搬のみは記載の必要はありせん。
参考資料
出典:国土交通省 関東地方整備局
技術情報 > 公共工事の品質確保 > 土木工事書類作成マニュアル
土木工事書類作成マニュアル 施工対台帳、施工体系図に関するQ&Aより